水素社会へ向けた水素の供給技術

  水素社会に向けた取り組みが続いている。モビリティでは2018.6に日産、ダイムラー、フォードのFCV量産化計画が中止になるなど、当初の計画達成は厳しい見通しである。一方で、発電用途において長期、大容量で貯蔵するという観点から、PTGの検討は各国で進められている。つまり、水素社会を実装することに望みをつなぐとすれば、水素供給について、大容量供給における安定性向上が課題となっている。

  水素を大量に供給するために有機ハイドライド方がある。実際、JXTGではオーストラリアで再生可能エネルギーで水分解し水素を生成させた後、MCHを生成、日本に移送、水素を取り出すことに成功した。

  大容量化を目指すことには賛成である。特に、なるべく既存インフラを使用することでイニシャルコストを下げて行く必要がある。

  電池を始めとする電気はデジタルと相性が良い。一方で、デジタルトランスフォーメーションを目指すなら水素キャリアなどマテリアルとの融合一体を目指してゆきたい。

水素エネルギー社会への取り組み

水素エネルギーへの社会受容性は低い。なぜなら、水素は爆発限界域が広く、工業とは縁遠い多くの方々に危ないと印象を持たれているからである。その解決としてエネルギー政策上の重要性、地球環境問題への貢献可能性を議論していく中で浸透する必要がある(以上  化学と工業 09)。

上記には賛成である。実際、日本の1次エネルギー自給率は8.3%である。加えて、水素は使用次に二酸化炭素を放出しないし、将来的には製造も非石油系から行うことを目指している。具体的な数値を根拠にして上記の議論に貢献してゆきたい。

水素キャリアの生き残る道

 パリ協定での目的を達成するために日本政府は水素基本戦略を201712月に承認した。この戦略を社会に実装するためには大容量の水素用途が必要であり、その中でガスタービンの利用は大容量用途であり、有望である。実際、神戸のポートアイランドでは1MWガスタービンを有する熱電供給設備を用いて、地域レベルで電気、熱、水素それぞれのエネルギー利用を目指す実証実験を行った。

 このような水素社会を目指す取り組みに対して懐疑的な見方は根強い。それは、水素社会はシステム全体が原理的に低効率であるためである。水素含めた、エネルギーは、一般に、製造、貯蔵・移送、利活用の3段階で考えることが多い。この3段階について、水素エネルギーシステムは電気直接活用と比較して、電気エネルギーを化学エネルギーに変換し、それをまた電気エネルギーに戻す過程がある分だけエネルギーをロスする。実際、モビリティの分野では2020年のFCV40,000台の社会実装に対して、201712月時点で2,000に留まっている。さらに、ダイムラー、フォード、日産・ルノーFCVの商用化を凍結した。

 それでも水素キャリアは社会に実装する可能性を秘めている。それは大規模貯蔵が可能であり、新たなインフラ投資を抑えられるためである。実際、アンモニアは年間100tを超える生産量である。一方、全固体電池にはLaTiZrなど希少な元素を用いることも多く、エネルギーという社会インフラを直接に貯蔵することは容易ではない。

 以上のように、水素社会は当初思い描いていた、FCV水素ステーションという看板ではない形で社会実装を目指すことになりそうである。その中でも水素発電やエネファームなど、定置型、大規模型の用途は有望であり、少なくとも早期に社会実装される可能性がある。

個のちから

デジタル化が個人での活動を開放したと持ちきりである。実際、いろいろな情報媒体でその効用を目にすることも多い。一方、地球環境問題、国跨いだ情報、人、モノの移動を前提にして、時代が求めているのことに共感がある。こちらはその不具合が目についている。個人ではひたすら自分の近況や趣味を自分の近しい人たちに共有するナルシスト化が進み、国レベルでも米中英露は自国優先である。


デジタル化は止められない。好奇心を止められるのはそれを上回る恐怖と言われるが、デジタル化において、今、圧倒的に好奇心優勢だ。シンギュラリティはデジタル弱者からのイクスキューズにすら見える。


ではデジタル化において今すること何であろうか?個人主義を進めつつ、共感すべきは何だろうか?


それは哲学するこころだ。

それは存在を問うことであり、これは潜在的に人間が持ち得る最大の意識能力だ。

読売新聞 2019-05-04

外国人受入を目指して、在留資格を認める「特定技能」試験が行われた。分野は外食、介護、宿泊の3種である。まだ手探りの部分もあり、テキストやサンプル問題の準備状況に現れている。外食はテキスト・サンプル問題ともにあり、介護はテキストなく、サンプル問題はある。宿泊はテキストも、サンプル問題もない。受験回数も1回あたりの受験者数も大きく異なる。政府は悪質なブローカーの排除を目的とした覚書の締結を進めている。

化学と工業 巻頭言

過去20年を総括して将来の科学研究の計画を立てるときがきた。なぜなら、この20年に挑戦してきたことの影の部分が目立つようになってきたからである。まず良い部分について述べる。それは科学と社会の距離が近づいたこと、社会に役立つ応用を考えた研究が増えたこと、研究に競争原理が持ち込まれたことである。一方で、ひずみについて述べる。それは、正味研究時間の激減、不安定・従属的雇用の増加、研究ポピュリズムの横行、研究不正の多発(功名心に謙虚さ座屈)である。社会の科学に対する期待を考えると科学者はゆっくりもしていられない。しかし、科学の進歩には静かに研究を遂行する十分な時間が欠かせない。若者にとっての良い研究環境とは良い教師、先輩に恵まれ、研究費にそれほど苦労せず、研究テーマを自ら選べる環境である。(御園生誠先生 要約 本ブログ著者)

化学と工業 巻頭言

失敗を評価し、ある大きさでもって歓迎する仕組みが科学と技術の進歩に必要である。なぜなら、科学と技術の進歩には挑戦が必要であり、挑戦は挑戦的であるほど失敗確率が上がるからである。現在は結果を求めるあまり、ちまちました、安心できるテーマが選ばれる傾向にある。これは国の予算やプロジェクトでの中間スクリーニング、ファンドのアカウンタビリティー、でよく観察される。グリーンもライフも結構だが、誰も見向きもしないテーマを自由にやって、それぞれが評価される科学社会が欲しい。(河田聡先生  要約は本ブログ著者)