化学と工業 巻頭言

過去20年を総括して将来の科学研究の計画を立てるときがきた。なぜなら、この20年に挑戦してきたことの影の部分が目立つようになってきたからである。まず良い部分について述べる。それは科学と社会の距離が近づいたこと、社会に役立つ応用を考えた研究が増えたこと、研究に競争原理が持ち込まれたことである。一方で、ひずみについて述べる。それは、正味研究時間の激減、不安定・従属的雇用の増加、研究ポピュリズムの横行、研究不正の多発(功名心に謙虚さ座屈)である。社会の科学に対する期待を考えると科学者はゆっくりもしていられない。しかし、科学の進歩には静かに研究を遂行する十分な時間が欠かせない。若者にとっての良い研究環境とは良い教師、先輩に恵まれ、研究費にそれほど苦労せず、研究テーマを自ら選べる環境である。(御園生誠先生 要約 本ブログ著者)