化学と工業 論説

日本学術会議協力学術研究団体に登録されている化学系の学協会は約40である。2009年ごろのアンケートでは1人あたり2〜3の団体に所属している。一方で、中心的な研究者は複数の団体に所属しているので、多くの研究者は1つの団体に所属していることも推定される。これが、研究者のタコツボ化を助長している。このタコツボ化とは反対に、近年発展を遂げているAI、ビッグデータ、などには広範囲な科学的知識がインプットされる必要がある。この点、慣性や惰性で動いている閉じた学協会には実施が困難である。現状からの脱皮が必要である。いくつかの脱皮れがある。実際、日本表面学会は真空学会と統合し日本表面真空学会となり、物理、化学、バイオ、電気電子がバランスし、学と産の実質的提携も得られる体制が整ってきている。(出展  岩澤康祐先生 寄稿 要約 本ブログ著者)

輸入実務から見た化学物質管理 技術士2019-02

   化学物質の輸入実務において中間業者が重要である。なぜなら、リスクコミュニケーションが円滑となるからである。化学物質を海外原料メーカーから輸入するとき、営業秘密として情報を隠そうとする場合が考えられる。このとき、化学物質管理で必要な情報が得られず輸入許可が下りないことがある。そこで化審法の既存化学物質とCAS番号などからの構成成分の化学物質名称を比較し、既存か新規かを判断しなければならない。この方法は化学に関する高い専門能力と秘密保持義務を果たす能力が求められるため、技術士技術士を要件とする化学物質管理士の活用が期待される。さらに、安衛法、消防法、高圧ガス保安法などの法規制対象に該当しないかを確認する必要がある。このような業務を行う人材は少子高齢化の進む中でますます困難になっていく。そのため、化審法の既存化学物質とCASの化学物質を自己学習させ組合せを10件以下まで絞りこむことを提案する。

林業成長産業化@鳥取 月間技術士2019.2

  鳥取では現知事(平井知事)就任以来、大手電機メーカーの撤退やリーマンショックなどにより産業構造の大きな転換を求められてきた。その中で「あるものを活かす」ために林業の成長産業構造化を行なってきた。実際、平成17年度以降、林業従事者はv字回復をしている。特に、基本給などを支援する鳥取県独自の制度も手伝い、若い人が増加している。さらに、航空レーザーなどを活用した資源情報取得なども利用したスマート林業にも取り組んでいる。一方で、建築材工場の需要高や木質バイオマス発電などの出口戦略も整えている。

   「森は未来へ伸びる宝、鳥取から林業は成長産業へ」挑戦は続いている。

化学技術の方向性 化学と工業2019−02

  学術倫理が揺らいでいるらしい。発端は2018年の晩秋に遺伝子編集による人間が誕生した、とニュースの大々的な広まりである。このニュースの真意は明らかではないが、世界中の学者から学術倫理および規範に違反するとして批判されている。この問題は人間がもつ時に規範を超える力ももつ好奇心の負の側面と考える。一方、日本ではSoicety5.0と呼ばれるデジタルとリアルの融合を志向して社会が築かれようとしている。しかし、これらの政策において人は一様として扱われており、個が反映されていない。これでは多様な価値観を反映できず、社会は不安定化する可能性が高まる。

   筆者のいう社会構造への個の反映には賛成である。なぜなら、今は昔と比べて、個人が社会へ情報発信する能力が飛躍的に大きくなっており、個人の嗜好は反映され易いからである。しかし、どうしても考えなければならないことが1つある。それはエネルギーである。なぜなら、多様化する社会は冗長化し、分散化し、効率が悪いからである。このエネルギー問題解決のポイントは再生可能エネルギーであり、特にエネルギーキャリアの充実である。このエネルギーキャリアの充実に関して水素やアンモニアなどのシンプルで安価な水素化合物は有望であり、日本は基礎研究から社会実装まで世界の先端を走っている。ロードマップからは少し遅れ気味ではあるが、来年のオリンピック、その後へと広義の水素社会を築いていくことは大切である。

水素社会

    今冬(2018年12月-2019年2月)は暖冬の見込みだそうである。単純に相関を取るべきではないとする意見もあるが、近年地球温暖化が進んでいるとされており、その顕在化であることが推定される。

     2015年のパリ協定により、日本は2013年度比で2030年までに26%のCO2削減目標を掲げている。その達成のために、水素はこれまでの石油化学の発電や燃料用途を潜在的にはクリーンに代替できる素材であるとして注目されている。

    その水素の開発が遅れている。水素開発について2020年までに水素ステーションを160箇所、FCVを4万台普及させるとしていた。これら2つの取り組みはは水素の社会需要を増やす意味において重要である。しかし、この施作はそれぞれ100箇所(約60%)、2000台(5%)に留まっている。

    水素ステーション課題は価格である。価格が下がらない原因は安全規制が厳しいことに大部分がある。まずは規制緩和が重要である。

     一方でFCVの課題も価格である。こちらは燃料電池システムの効率と白金など高価格素材の使用量に要因がある。

     クリーンな水素を用いて発電や車を走らせることは二酸化炭素の使用量を減らすことができるため重要である。そして二酸化炭素使用量削減は地球温暖化を防ぎ、将来、人類が生き延びるために必要である。

化学と工業 2018-12 巻頭言

    日本はサスティナビリティに関して遅れている。なぜなら、杓子定規な仕事のやり方が残り、サスティナビリティをビジネスチャンスとしてしか見ていないからだ。

    2015年9月25日「持続可能な開発のための2030アジェンダ」と題する目標が示された。これは17の目標群から成り、「何をすべきか」という行動目標ではなく、「何を達成しなければならないか」という到達目標を示したことにこれまでのミレニアム開発目標(2015年終了)との違いがある。

    上記の様に達成する対象の本質に意識してフォーカスすることは重要である。そしてこの先にサスティナビリティの達成が待っている。

文部科学省次官の引責辞任 (読売22日)

「要約」文部科学省の次官が、幹部の汚職と自らのコンサルティング会社役員との接待同席(減給処分)の責任を取って辞任した。国家公務員の倫理規程違反である。新体制では危機感を持って再発防止に努めることが信頼回復への出発点となる。